価値観は、当の昔に変わっているのに 気づきたくない人達

企業戦士という単語が日本の辞書から消えた。この言葉はもう99%の若者に通じないそうである。
正直言って我々世代の人間には、なぜこの言葉が通じないのか理解できない。読んで字のごとく。会社のために一生懸命働く人。
そのままじゃないかと言いたくなる。

だが通じない。「会社に人生を捧げる人のことだ」と教えてあげると、若者は「なんだ社畜のことか」と納得する。
つまり企業戦士という単語は社畜という単語に置き換わったのである。

かつて日本男子の9割以上が喫煙者だった頃、喫煙はカッコよく、タバコの香りはセクシーなものだった。
今では喫煙者はカッコ悪い人でタバコの煙は迷惑でしかない。同じものが受け取る側の価値観によって180度変化する。

かつてのビジネスマンは残業している自分が大好きで、「24時間働けますか?ジャパニーズビジネスマン」というCMに歓喜した。
みんなでリゲインを飲み、残業しまくる自分に有頂天になったものである。

会社に人生を賭ける男はカッコよかった。そんな男と結婚したい女性がたくさんいた。しかし時代は変わった。
自由がなく、ただ会社に使い倒される社畜。そんな男と結婚したら女は不幸である。これが現代の価値観なのだ。

景気に代表されるように社会は人間の気分で動いている。先行きが楽観視できればみんながお金を使う。
景気が良くなる。先行きが不安ならみんながお金を貯め込む。景気が悪くなる。
大衆の気分を反転させることは途轍もなく難しい。

国家のために喜んで税金を払う会社が減っていくように、会社のために喜んでハードワークする若者も減っていく。
価値観が変われば人の動かし方も変わる。どうすれば喜んで税金を払ってもらえるのか、政府は真面目に考えなくてはならない。
同様に、どうすれば機嫌よく働いてくれるのかを、経営者は考えねばならない。

会社が倒れたらみんな倒れるんだぞ、などと言っても意味はない。そうなる前に転職するだけだ。
いかに楽しく働いてもらうか。いかに残業を減らして少しでも多くの報酬を支払うか。経営者はここに取り組むしかない。
ハードワークがカッコいいと思う若者はもういないのだ。

今さらタバコのかっこよさを語っても誰も見向きはしない。自分で灰皿を持ち歩き、所定の場所でマナーを守って喫煙する。
それが価値観の変化した社会に受け入れられる唯一の方法なのである。