息を吐くように嘘を付く人、そうだと信じて止まないとなると・・真実は捻じ曲げられてしまうか

好んでよく本を手に取る作家さん 偶々 古本屋で単行本を購入して、読んでみた。サクサクと読める文章にやっぱり上手いなあと感心。

シリーズ物と違った切り口で、ある事件をモチーフにしたのかと思うほどのクオリティだったのだが、作家の意図とする所にまんまと嵌った。

冒頭で犯人とおぼしき主人公が逮捕、けれど動機が「えっ」と思うほどの内容。でも本人は罪を認めている。が、捜査に当たると全く犯人像と

掛け離れた好人物で、誰も何かの間違いではと話をする。探偵役の小説家が自ら捜査に乗り出すが、主人公の身の回りで不可思議な事件が次々

と発覚するが、真相にはたどり着かないし、主人公も否定している。話は進んで、粘り強く近所の人、大学時代の友人、高校時代や小学生時代の

知り合いと話をしていくと、人によっては、違う意見を言う者も現れる始末。刑事にも疑いの目を向けられたが、主人公の策略か分からないが、

手を汚さずの内に、相手が一歩的に敗れ去っていく結末を迎えてしまい、結果、真相はむやむやに、事故死として処理されてしまう。

本を読み終えても、「こうでした」とならず、モヤモヤだけが残る形で、読者それぞれで考察してねというエンディングです。

何年か前にテレビドラマ化にもなったらしい。ネット上での書き込みを見ると、それはいろんな意見が出てますわ。

要約すれば、人は、他人の事を分かってるようで、分かっていないのだと、こうでなければおかしいとか、普通こうじゃないかと、

納得できるストーリーを欲しがっていて、相手から言われて、そうだよなと自分で腑に落とさないといけないものがあるのではと。

殺人をするのだから、相当の理由があったにちがいない、普通の人間は、そんな理由で人は殺さないと、その人が持つ基準で見たがるようだ。

理由が変であれ、その人にとっては、重大な案件だったかも知れない。そんな些細なことでまさか・・・ 理解不能なものを前にすると

自分なりの納得出来るストーリーを作り上げてしまうそうです。人は外見だけでは分からないという事。身内である家族であっても、

本当の事は、分かっていないんじゃないだろうか。ある一面では、そうであろう。こういう一面もあるのも本人の個性で、またある面では、

全く違う性格も隠されているのも、本人は一人で、区別せずに存在していて、その時の環境に応じて使い分けてるかも知れないしね。

他人から見たら、邪道だの違法だのと思えても、その人の倫理からは普通の出来事で、何を言ってるのか分からないとでも思っているのでしょう。

人間の思い込みの危険性を浮き彫りにする、人は理由が無ければ行動しない。意味を求め、秩序を欲する生き物です。

理解できないものを、理解できるものに仕立ててしまうことが、一番怖いかも知れませんね。

世の中には理解できないままの人が、存在している、それは狂暴でもなく、精神異常者でもなく、世の中的には、人格者とされ、なまじ仕事も

出来るエリート、家庭でも幸せ一杯、なんの不自由もない人だから大丈夫と表面だけで判断したら危ないですよっていう小説でした。

小説にありがちなどんでん返しもなければ、別に真犯人が現れるとかいうのは、全く皆無で、背筋が寒くなるばかりの結末。

そういえば、ワイドショーで連日賑わっている、名古屋西区の事件の容疑者の経歴や、留置場で話されたという報道を見ていると、動機らしいものは

これだって言う物は、無いようですね。強い恨みがあったとか、殺したい理由が被害者に対してあったのか分からないですね。

もしかしたら、この小説のように、世間の人たちが納得するような理由では無いかも知れません。ですが本人はどうしても許せなかったんでしょうね。

連日、テレビに登場してる被害者の夫が、おっしゃる話や感想は、男性からの意見だけで、真相は違うのかも知れません。何気なく呟いた言葉の何処かに

スイッチが入ってしまったかも。本人は悪気は無く、既に過ぎてしまって忘れているかも。でも容疑者は、ずっと心の中に残っていたのでしょうか。

そんなことで人を殺しちゃうのっていう結末が待っているかも知れませんね。

自分の事でも全て知っているかと思いきや、分かっていない動物ですよ。自分の印象と他人から見た自分の印象も一緒だと思わない方が良いのでは。

人の見方は優しいようで残酷なものでもあります。